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53) 顎関節症の治療
顎関節症の症状
口が大きく開けられない、顎のつけ根が痛む、カクカクとかコキッという音( クリック音)やこすれる音がする、などの症状が出ることがあります。
これらの状態は顎関節部に現れる様々な症状を総括した呼称で、「顎関節症」と言われています。
耳鼻科を訪れる患者さんでは「耳が痛い」と訴えられる場合も多く、最近ではある種の頭痛や肩凝り、眩暈症やさまざまな愁訴の原因とも考えられています。
症状の現れ方は人によって様々です。
典型的には、初期のうちはクリック音が出たり出なかったりしますが、長期化すると必ず出るようになり、閉口する時にも発生するようになります。
この時期には痛みは出ませんが、ひっかかりが強いと痛みが出ることもあります。
さらに進行すると、時折、口が開かなくなり、もっと進むと全く口が開かない状態になります。
顎関節症の原因
原因は外傷、顎の過伸展(歯科治療で長時間大きく口を開けていたなど)、歯の噛み合わせが悪かったり、歯ぎしりや歯を噛みしめるくせなどの悪い習癖、などのために、上顎と下顎の間のクッションの役割をしている「 関節円板」に損傷をきたした場合が2/3と考えられています。
口を開ける時は、下顎が関節のへこみから少しはずれるように前に動きます。
その時に関節円板も連動して動くのですが、これが前にずれたままになると、顎の開閉の度にひっかかり、こすれて炎症が起きたり、
余分な筋肉を使って筋肉痛が生じたりします。
以前は 歯の咬み合わせの異常が大きな原因として考えられていましたが、今では「 咬み合わせの異常は原因でなく結果であり、顎関節症の症状の一つである。」と考えられています。
根本的な原因は筋肉の緊張です。
筋肉の緊張が顎関節の耐久限度を超えた時に顎関節症が起こり、筋肉に引かれて下顎がずれることによって噛み合わせの異常も生じる
と考えられています。
筋肉の緊張の一番大きな原因が、歯ぎしりです。
歯ぎしりのうち、音がするのは2割程度で、8割は音がしないため気づかれにくいようです。
関節円板のズレは、先天的に靭帯が伸びやすい体質の人が歯ぎしりをすることにより、関節の靭帯が伸びて関節がゆるくなることが原因となります。
筋肉の緊張が強いと、関節の骨と骨を圧迫する力も強くなり、関節円板の滑りが悪くなったり、関節に引っかかったりして症状が出るようです。
また 二十歳から三十代の女性に比較的多く見られることから、他の原因としてストレス、緊張などの生活上の理由や心理的背景が関係する場合もあると考えられています。
顎関節の仕組み
顎関節は両耳の直前にあり、頭蓋骨の凹部(下顎窩)に下顎の骨の凸部(下顎頭)が入り込む構造になっていて、その間に「関節円板」という
小さな軟骨がはさまっています。
関節円板は、 関節の両側の硬い骨がこすれないように、間でクッションの役割をしています。
この関節円板が下顎骨の動きに合わせて前後に動くことで、大きく口を開けることができるのです。
また前後の動きだけでなく、食べ物を咬む時には下顎骨が左右に動くなど複雑な動きをすることも可能にしています。
関節円板は、靭帯によって下顎頭(関節突起)に連結しており、これらの関節組織は関節包という繊維性の膜に包まれています。
さらに筋肉がそれらの動きを支えています。
顎関節症のタイプ
このようにいくつかの組織によって構成されている顎関節の、どこに異常があるかによって4つに分類されます。
1)咬むための筋肉である咀嚼筋の障害、
2)関節包や靭帯の障害、
3)関節円板のズレによる障害や、
4)高齢になると起こる顎関節の変形による障害(変形性関節症) です。
この中で一番多いのは、咀嚼筋の障害によって起こるタイプです。
咀嚼筋は、こめかみの「側頭筋」、頬にある「咬筋」、「内側翼突筋」、「外側翼突筋」という
4種類の筋肉から構成されます。 これらの筋肉が緊張して固くなると、口が開きにくくなります。
また、血行が障害されて筋肉の痛みが出ますが、筋肉の痛みは鈍痛なので、関節の痛みより位置が特定しにくく、
患者さんの多くは筋肉が痛いとは自覚できません。
顎関節の治療方法
治療はその病状の程度によって異なります。
極端に大きな口を開けない、顎を横にあまり動かさない、片側だけでものを噛まない、などに留意し、消炎鎮痛薬、筋緊張緩和剤を内服します。
時には患部を暖めて血行を促進する「理学療法」や、炎症が激しい場合には関節腔内に薬液の注射をすることもあります。
ほとんどの場合はこれらの保存療法で改善します。
長期化した場合や、重症の場合は歯科・口腔外科的な治療が必要となります。
その中ではプラスチックの板(スプリント / ナイトガード)を歯にかぶせる治療が一般的です。
歯の咬み合わせが悪く余分な負担がかかる場合は、歯を少し削って歯の高さを揃えることもあります。
一度顎関節症になると、治っても無理がきかなくなることがあります。
硬い食べ物をあまり食べない、顎を後ろに引く動きが必要な管楽器の演奏は避けるなど、顎に負担がかからないように日頃から気を配る必要があります。
最近では歯のかみしめとストレスの関係など心理面からの治療も注目されています。
また、ストレスをためないような生活を心がけることも大切です。
上記の治療の保険点数と料金計算 (歯科用ナイトガードを使う治療法の場合です。)
顎関節症の治療は数カ月から数年に渡ることが多く、毎日の継続的な器具の着用が望まれます。
回数 | 処置 | 解説 | 点数(点) | 金額(円) |
1日目 | 初診 | 症状を確認します。 | 218 | |
| X線写真撮影 | 顎関節などの状態を確認します。 | 317 | |
| 単純印象 | 上の歯並びの歯型を採ります。 | 40 | |
| 咬合採得 | 咬み合わせをチェックします。 | 185 | |
| | 計 | 760 | 2,280 |
2日目 | 再診 | 症状を確認します。 | 42 | |
| 歯軋り咬合床 | 歯科用ナイトガードをつけます。 | 1,600 | |
| | 計 | 1,642 | 4,930 |
3日目 | 再診 | 翌月以降、症状を確認します。 | 42 | |
| 床副子調整 | 必要に応じて月に1回、調整します。 | 220 | |
| | 計 | 262 | 790 |
| | 合計 | 2,664 | 8,000 |
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